犬を飼ったらしておきたいこと
若くて元気な時から定期的に健康診断を受けることは重要です。身体に異常があっても言葉で伝えられないワンちゃんにとっては健康診断が「ことば」の代わりになります。 特に若齢期に多い病気に、感染症、先天的な病気、偏った栄養がありますので、獣医師による専門的なチェックや検査が必要となり、病気の早期発見・早期治療につながります。
一方で子犬の時期に必要なのは病気の事ばかりではありません。「しつけ」「人と生活をする上でのマナー」を覚え、様々な体験をさせて「良い社会化」を積んでいく必要があります。ライフステージによって予想される病気が異なります、先読みをした健康診断や定期検査をいたしましょう。
犬の狂犬病予防注射
ヒトを含めた全ての哺乳類に感染し、発症すれば治療法はなく死亡率はほぼ100%です。狂犬病は世界中のほとんどの地域で発生しています。
日本は昭和32年以降、犬の狂犬病の発生はありませんが、これは飼い犬に狂犬病予防注射が法律で義務付けられた成果です。海外から狂犬病を進入させないために必ず年1回の狂犬病予防注射を受けましょう。
なお、狂犬病の予防注射は「生後91日齢以降」、「未接種の犬を飼い始めた場合30日以内」に接種することが義務付けられており、犬の所有者や所在、飼い主の住所が変わった場合には登録の変更を行います。また、狂犬病の鑑札と注射済票は装着義務がなされており、つけないと罰金という決まりがあります。
犬のワクチン予防接種
ワクチン接種は愛犬を伝染病から守る大切な習慣です。生まれたばかりの子犬は母犬から母子免疫を譲り受けていますが、生後2~3ヶ月経つとその免疫力は弱まり様々な感染症に感染する危険性が高まります。この時期のワクチンはより確実な予防効果を得るために2~4回のワクチン接種が必要になりますので、動物病院にご相談下さい。1歳以降は年に1回の追加接種をするか獲得した免疫力(抗体価)のチェックがお勧めになります。
予防できる病気
犬ジステンパー
感染犬との直接接触や鼻水や目ヤニなどの分泌液、糞便や尿などの排泄物との接触により感染し、伝染力が比較的強いウイルス感染症です。症状は高熱や目ヤニ、鼻水が出て元気や食欲がなくなり、嘔吐や下痢、肺炎がおこります。病気が進むと神経系がおかされ治癒しても麻痺などの後遺症が残る場合があります。ワクチン未接種犬の死亡率は神経症状が出ると90%と高く、幼齢犬で約50%と報告があります。
犬パルボウイルス感染症
感染犬の糞便から口や鼻を介して侵入するウイルス感染症です。症状は激しい嘔吐、下痢を繰り返しトマトジュースのような血便がみられ、元気や食欲がなくなり急激に衰弱します。犬の死亡率の高い感染症の一つで、ワクチン未接種の子犬の場合、治療が遅れると2~3日以内に死亡することがあります。
犬伝染性肝炎
感染犬との直接接触や唾液などの分泌液、糞便や尿などの排泄物との接触により感染します。特に尿には持続的にウイルスの排泄が認められます。症状は発熱、腹痛、嘔吐、下痢がみられ生後1年未満の子犬が感染すると全く症状を示すことなく突然死することがあります。
犬アデノウイルス2型感染症(犬伝染性気管炎)
飛沫感染で侵入したウイルスが鼻粘膜、咽頭、気管支で増殖します。集団飼育下で感染しやすいウイルス感染症です。発熱、食欲不振、クシャミや乾いた咳がみられ肺炎を起こすこともあります。他のウイルスとの混合感染により症状が重くなり、死亡率が高くなる呼吸器病です。
犬パラインフルエンザウイルス感染症
飛沫感染で侵入したウイルスが鼻粘膜、咽頭、気管支で増殖し、集団飼育下で感染しやすく伝染力が非常に強い感染症です。カゼ症状がみられ、混合感染や二次感染が起こると重症化し死亡することがあります。
犬コロナウイルス感染症
感染犬の糞便や汚染環境で口や鼻を介してウイルスが侵入し消化管で増殖します。成犬の場合は軽度の胃腸症状ですみますが、犬パルボウイルスとの混合感染では重症化することがあります。子犬の場合は嘔吐と重度の水様性下痢を引き起こします。
犬レプトスピラ感染症
感染犬や野ネズミの尿が、口や皮膚を介して細菌が侵入します。農村部の病気でしたが、近年はレジャー地域や都市部でも感染が見られるようになりました。感染初期は発熱、食欲不振、沈うつとなり、続いて口腔内や結膜に内出血を示し黄疸が起こります。家畜伝染病予防法(犬)、感染症法(ヒト)で届出義務がある重要な病気です。
犬の避妊手術
卵巣と大部分の子宮を外科的に摘出する手術です。古くは妊娠、出産を望まない事を目的に手術が行われていましたが、近年では、癌や卵巣子宮疾患を予防しQOL(生活の質)を向上させ長く幸せに暮らす目的で避妊手術が行われるようになりました。
犬は47%が癌で亡くなるとの報告があり、中でも乳腺腫瘍の発生率は全腫瘍の42~52%で、ヒトの約3倍の発生率とされています。悪性の乳がんの割合はおよそ50%で、転移するなどして寿命を脅かします。避妊手術はその時期が重要です。初回発情までに避妊手術を行った場合は99.5%の割合で乳腺腫瘍を予防できます。また、卵巣子宮を摘出することで子宮蓄膿症等の生殖器関連の病気の予防に対し、非常に高い効果を発揮します。
犬の去勢手術
精巣を外科的に摘出する手術です。古くは繁殖能力を無くすことを目的として行われていましたが、近年では老化に伴って起こる病気の予防だけでなく、問題行動を未然に防ぐために適切な時期に去勢手術が行われるようになりました。不適切な排尿や攻撃性、過剰な吠え、放浪などの一部の問題行動を減らせる可能性がありQOL(生活の質)を向上させ家族の一員として人間社会の中で長く幸せに暮らす目的もこの手術の大きな要因になります。
精巣が陰嚢内に降りずに腹腔内や鼠径部の皮下にとどまっている状態を停留精巣とよびます。停留精巣の場合は正常に比べて、精巣が腫瘍化する可能性が8~11倍高いとされていますが、これも事前の去勢手術で防げます。また、去勢手術をした雄犬は精巣腫瘍、肛門周囲腺腫瘍、前立腺肥大、会陰ヘルニア、前立腺炎などの病気の予防に効果があります。
犬のノミ・マダニ予防
ノミやマダニといった外部寄生虫は様々な予防薬で大切な愛犬を守ることが出来ます。
当院では簡単なスポットタイプやおいしい経口タイプのお薬がございますので是非お気軽にご相談ください。
犬のフィラリア症
フィラリア症は蚊が媒介する代表的な病気で、フィラリアを持っている蚊がワンちゃんを刺すことで感染します。フィラリアは成虫になると最大30㎝にもなる糸状の寄生虫で、心臓や肺動脈に寄生して右心不全をはじめ肝臓、腎臓、肺などに障害を起こします。治療せず放置すると死に至る病気で、20年ほど前から急激に犬の寿命が延びたのはこの病気の予防のおかげです。
フィラリア症の主な症状
ワンちゃんがフィラリアに寄生されてもすぐに気づくことはできず、症状が現れたときにはすでに重症化しています。軽度では無症状や軽い咳をするくらいですが、症状が進むにつれて発咳、元気や食欲がない、お腹が膨らむ、呼吸が速い、尿が赤くなる等の慢性症状がみられます。またフィラリアの寄生数が多く、血管をふさぐことで後大静脈症候群(ベナゲバ・シンドローム)という呼吸困難、黄疸、蒼白、虚脱等の致死的な急性症状を起こす場合もあります。
フィラリア症の検査・予防
フィラリア症は予防が確立されており、予防薬で100%感染を防ぐことができます。ただし、予防薬の投与前には検査が必要で、もしミクロフィラリアが体内にいることを知らずに予防薬の投与をすると、ショック状態や最悪の場合は死に至るケースもあります。安心して投薬するためにも事前の検査が必要です。
フィラリア症予防は通年投与を推奨します。
当院ではおいしい経口タイプや簡単なスポットタイプ、またお注射での予防薬を取り扱っております。さらに、フィラリア症とともに犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫などの消化管に寄生する内部寄生虫、ノミやマダニの外部寄生虫の駆除もおこなえる予防薬を取り扱っております。是非お気軽にご相談ください。
犬のしつけ
犬と一緒に生活をする上で必要なヒトのマナー、犬のマナーがあります。それぞれのご家庭の事情や、犬種による飼い方の違いもあるでしょう。当院ではトレーナーが中心になって個別の教室を開いています。どうぞご遠慮なくご相談下さい。
犬を飼う前の相談
新しい家族を迎えるにあたり、ご不明なことやご心配なことはたくさんあると思います。当院ではワンちゃんを初めて飼うご家族はもちろんですが、経験のある方も飼う前のご相談を受け付けております。お気軽にお電話やメールでお問い合わせください。
猫を飼ったらしておきたいこと
身体に異常があっても言葉で伝えられないネコちゃんにとっては健康診断が「ことば」の代わりになります。若くて元気な時から定期的に健康診断を受けることで、その子の健康時の検査数値を得られ、年齢による変化の把握や将来の病気の早期発見・早期治療につながります。
また、愛猫の健康維持のためには予防が重要です。病気にならないために予防できる病気は全て予防して健康管理につとめましょう。
ネコちゃんは決して外へ出さない事をお勧めします。外に出すことで野良猫との接触による感染症をはじめ、ケンカ、外傷や交通事故、異物誤食や排泄の確認ができない等の健康管理が行き届きません。
猫のワクチン予防接種
ワクチン接種は愛猫を伝染病から守る大切な習慣です。子猫は生まれてからしばらくは母猫から譲り受けた母子免疫で感染症から守られますが、その免疫は長続きせず徐々に低下します。病原体から身を守る力が十分ではない子猫は病気に対し無防備になり、発症すると治療が難しく、重症化して命に関わる事もあります。また、ワクチンで得られた免疫は一生有効ではありませんので、成猫になっても年一回の追加接種が必要です。ネコちゃんの生活環境によりかかりやすい感染症の種類やリスクも違いますので、接種前には当院にご相談下さい。
猫の主な感染症
猫ウイルス性鼻気管炎(ヘルペスウイルス感染症)
感染猫との接触や、鼻水やくしゃみなどの飛沫感染により結膜炎や上部気道炎などの症状を起こします。感染力が強く、ほかのウイルスとの混合感染も多いため、特に子猫の場合は重症化して死亡するケースもあります。また一度感染するとウイルスは体内に残り、生涯にわたりストレス等で再発を繰り返します。
猫カリシウイルス感染症
感染猫との接触やくしゃみなどの飛沫感染で感染します。侵入したウイルスは結膜や舌、口蓋、気道粘膜で増殖し炎症を起こし、悪化すると舌や口回りに水疱や潰瘍がみられます。近年「強毒全身性猫カリシウイルス感染症」の報告があり50%以上の高い死亡率とされています。
猫汎白血球減少症(パルボウイルス感染症)
感染猫の糞便や汚染環境から口や鼻を介して侵入するウイルス感染症です。症状は激しい嘔吐、血生臭い血便がみられます。猫の死亡率の最も高い感染症の一つで、症状の進行が早く、急死するケースも珍しくありません。ワクチン未接種の子猫の場合、死亡率は90%以上と高く、また病原体の猫パルボウイルスは環境中で長期間生存するため二次感染に注意が必要です。
猫クラミジア感染症
感染猫との接触により感染し、伝染性の結膜炎や上部呼吸器症状がみられます。まれにヒトへの感染も起こす可能性があります。
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
感染猫の血液や唾液、涙、糞尿などにウイルスが含まれ、猫同士が同じ食器を使っての食事や、お互いを舐め合うグルーミングやじゃれ合いなどによっても感染します。感染経路が多く、伝播しやすい伝染病のひとつです。白血病ウイルスに感染しても激しい症状を示さない事が多く、一見健康そうに見えても次第に免疫力が低下して、あらゆる感染症に抵抗できなくなって発病します。口内炎や上部気道炎や皮膚病がなかなか治らなかったり、肺炎や敗血症、またリンパ腫や白血病など癌が誘発される恐ろしい病気です。現時点では根本的な治療法はありません。
猫免疫不全ウイルス感染症(エイズウイルス感染症・FIV)
感染猫の血液や唾液にウイルスが含まれ、感染猫とのケンカによる噛み傷などから感染するため、外出する雄猫に特に多くみられる感染症です。このウイルスはひとたび感染すると猫の体内から生涯消えることはありません。感染後は無症状のまま寿命を迎える猫もいますが、免疫力が低下し、口内炎や胃腸炎、上部気道炎などがなかなか治らず、感染末期には貧血や悪性腫瘍の治療にも反応を示さなくなります。現時点では根本的な治療法はありません。
猫のウイルス検査
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)と猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の2つの病気は検査キットを用いて病院内で簡便に検査ができます。猫白血病ウイルス感染症のワクチンを接種する前や、猫を飼い始めるとき、既に猫を飼っていて新しく猫を迎えるとき、外出や外出する猫との接触やケンカをした場合などには是非とも検査をお勧めします。
猫のノミ・マダニ予防
ノミやマダニといった外部寄生虫は様々な予防薬で大切な愛猫を守ることが出来ます。
当院では簡単なスポットタイプやおいしい経口タイプのお薬がございますので是非お気軽にご相談ください。
猫のフィラリア症予防
フィラリア症(犬糸状虫症)は本来犬の病気です。この寄生虫は犬だけでなく猫も蚊から感染し、肺や心臓に寄生することが知られています。猫は犬に比べて寄生数が少なく症状も乏しいため、診断が難しく発見が困難な病気です。症状は、発咳・呼吸困難・嘔吐・沈うつなどですが、何らかの症状が出たときには既に遅く、感染した猫の1/3に突然死のリスクがあります。猫のフィラリア症に対しては、現在予防しか確立されておらず、犬に比べて治療も困難かつ危険が伴います。
当院では簡単なスポットタイプでの予防薬を取り扱っております。さらに猫回虫などの消化管に寄生する内部寄生虫やノミやマダニなどの外部寄生虫の駆除も一緒に行えます。是非お気軽にご相談ください。
猫の避妊手術
卵巣と大部分の子宮を外科的に摘出する手術です。避妊手術の目的は繁殖能力を無くす事は当然ですが、老化に伴って起こる病気の予防や、発情期の激しい鳴き声も抑制できます。
猫の死亡理由の第一位は癌で、32%と言われています。乳腺腫瘍の発生率は全腫瘍の17%で、乳腺腫瘍90%が悪性と報告されています。生後6ヶ月齢以前の避妊手術で9割、生後1歳齢以前で8.5割の割合で乳腺腫瘍の発生を予防できます。また、子宮を摘出することで子宮蓄膿症等の生殖器関連の病気の予防にもなります。
猫の去勢手術
精巣を外科的に摘出する手術です。去勢手術の目的は繁殖能力を無くす事ですが、問題行動を抑制することは特に大きなメリットです。例えばスプレー行動や不適切な排尿、攻撃行動、外への放浪などを抑制します。家族の一員として人間社会の中で長く幸せに暮らすためにもこの手術は威力を発揮します。精巣が陰嚢内に降りずに腹腔内や鼠径部の皮下にとどまっている状態を停留精巣とよびます。停留精巣の場合は正常に比べて、精巣が腫瘍化する可能性が8~10倍高いとされていますが、これも去勢手術で未然に防げます。
犬猫のノミ・マダニ予防
ノミやマダニといった外部寄生虫は様々な予防薬で大切な愛犬愛猫を守ることが出来るようになりました。当院ではおいしい経口タイプや簡単なスポットタイプのお薬がございますので是非お気軽にご相談ください。
ノミ
ノミの生態
体長2㎜程の昆虫で成虫のみ寄生性があり、卵や幼虫、蛹は周囲環境で発育します。雌のノミの成虫は1日当たり平均25個の卵を産み、そこから生まれた幼虫は最短14日で成虫まで育ち、近くの動物に寄生して吸血を行います。
ノミによる被害
目に見える成虫は全体の5%といわれ、残りの95%はご自宅のカーペットや家具の下、ワンちゃん・ネコちゃんの寝具などに卵や繭の状態で潜んでいます。ノミは13℃の気温で活性化するため、ご自宅の中にいるノミたちは暖房の効いた冬でも快適に過ごしています。定期的なノミ駆除でノミのライフサイクルを断ち切ることが重要です。
ノミの予防
ノミによる動物への影響は、ノミ刺傷のほかにノミアレルギー性皮膚炎や瓜実条虫の媒介などあげられます。また、ヒトもノミ刺咬症や猫ひっかき病などの大きな病気に発展することがあります。
マダニ
マダニの生態
一生のうち2~3回宿主を変え、その都度吸血を繰り返します。マダニの吸血後の体重は吸血前の200倍にもなるといわれ、お腹いっぱいに吸血をした雌の成ダニは一度に最大3,000~4,000個の卵を産みます。
マダニによる被害
マダニの被害は吸血と刺傷だけではなく、生命をも脅かす多くの病原体を媒介します。犬では、バベシア原虫が赤血球に寄生して破壊されるバベシア症などが例に挙げられます。近年ヒトでは、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)が2013年に日本でも初めて死亡例が報告されるなど恐ろしい病気を媒介します。
マダニはどこにいる?
マダニはやぶや草むらなどに生息しており、ワンちゃんネコちゃんのお散歩のときに寄生する機会をうかがっています。都会でも公園や河原など緑が多い場所ではどこにでも生息している可能性があると思っていた方がいいでしょう。
マダニを見つけたら
マダニが寄生した場合は、無理に捕ろうとしてはいけません。無理に捕ると口下片という口ばしを皮膚に残したり、飽血したマダニを潰してしまうと体液が押し出されて病原体を伝播するリスクが高まります。マダニ専用のピンセットが無い場合は動物病院を受診しましょう。
マダニの予防
マダニのピークは成虫が多い春だけと思われがちですが、秋には若ダニや幼ダニが多く発生するので春と秋の二峰性とされており、年間を通じたマダニ対策が重要となります。